2022年2月23日水曜日

 命短し恋せよ乙女

 これは大竹しのぶさんのお母さんの好きだった歌だそうです。NHKのファミリーヒストリーで見たのですが、お母さんはエステルさんといって、キリスト者の家に生まれて、洗礼名のような名前だったようです。

 キリスト教を広めるお祖父さんの家に、救いを求めるように来ていたお父さんと大恋愛をして結婚したそうですが、実はお父さんには別居中の妻子がいたようでした。まさに、命短し恋せよ乙女だったわけです。

 でもです。今は百歳を見据えて生き方を考えなければなりません。

 どうやって生きていけばいいのか。

 できれば、女性でも職業を持って、独立して生きていけるようにした方がいいと思います。私たちのころは、女性は結婚して子供を産み、家庭を守るのが目標のように教えられてきましたが、時代とともに価値観はすっかり変わってきてしまいました。

 子供はかわいいですが、収入が不安定では育てられません。子供がいれば、老後も楽しいことは確かですが、子供を老後の保険のように考える時代ではなくなってきているように思います。

 少子化だと言われていますが、育てるのも大変ですし、親も子も生きていくのも大変です。そして、老いや死は誰の上にもやってきます。歳をとった今日この頃は、人間は生まれたときから死に向かって走っているのだという、見たくない現実を身近に感じてしまいます。

 生きていくのも大変だと感じているときに、ロシアがウクライナに侵攻して、支配しようとしているだの、中国が台湾に侵攻しようとしているだのを聞くと、私もリトアニアの人々のように人間の鎖を作って、無暴力主義で戦って、死んでもいいかなとか思ってしまいます。中国のロックダウンのように町中消毒をされたら、アレルギー体質の我が家族はそれだけで死の苦しみを味わうことになってしまいます。本当に強権下で生きていくのは大変なことです。

 こういうことを若いころから予測できたら、人は子供を、その愛のために産まないだろうと思います。

 命短し恋せよ乙女というのは、そういう現実を考えるな、と幻惑している歌のように聞こえてしまうのですが、それは年寄りのひがみでしょうか。

2022年2月15日火曜日

 本、神谷美恵子著作集第3巻、『こころの旅』 月報(9)

 この本、美智子妃殿下の愛読書だと聞いて即、買ったものです。いつのころだったでしょう。妃殿下が療養生活を終えられたころだったと思います。私にだって人に言えないつらい時期はありました。結構言いまくっていましたが。

 で、買ってみたのです。ところが、一ページで閉じてしまいました。いわゆる学者さんの本でした。血沸き肉躍るという文章ではありません。それ以来、40年くらいたってしまったでしょうか。つぶす時間に本を読み始めて、またこの本に行き当たったのです。

 本の間から、この月報がはみ出ていました。普通は月報はあまり読まないのですが、なかなか気が進まない本体を前にして、ちょっと見てみたのです。

 三人の方が、神谷先生の人となり、ご自分とのかかわりを書いていました。

高橋幸彦氏、「神谷美恵子先生と愛生園」。ここで『お』と思ったのです。愛生園って聞いたことのある名前でした。何年か前、隔離されていたハンセン病の患者さんたちが解放されて補償を受けられたという話があって、そのドキュメンタリーをテレビでも何度か放映していました。神谷先生はそこの精神科のお医者さんだったというのです。この高橋先生は神谷先生のお弟子さんで、同じく精神科のお医者さん、東京の大学に転任される神谷先生のあとを託された方のようでした。この文章の中でお二人のやり取りを見ていると、世の中にはこんな誠実な方たちがいるんだと、自分が恥ずかしくなります。そう感じるという事は、私にも誠実のかけらのようなものが少しは残っていたという事でしょうか。 

 二文目の『神谷先生を偲んで』の田中孝子さんは園の中で看護婦長さんをされていた方でした。前に読んだ『世界の奇談』でライ病に苦しむ患者さんたちの隔離政策の歴史を読んだばかりでしたので、身を投じて看護をしていた方がいたという事も驚きでした。まさに愛生園の看護の歴史を物語ってくれ、その中で神谷先生が、本を書いて印税が入ったから何かに役立ててと寄付をしてくれる様子を描写してくれていました。

 三文目は玉川よ志子さんという方で、病気のご主人を看病しながら、神谷先生と文通を重ねた方のようでした。その縁は先生のご尊父とご主人のご尊父が内村鑑三先生の門下だったという事でしたから、あの時代のキリスト教の精神が色濃く感じられました。

 氏も育ちも頭もよく、本の裏の経歴を見ただけでも「津田塾大卒、コロンビア大学留学、東京女子医専卒、東京大学医学部精神科、大阪大学医学部神経科勤務を経て、神戸女学院大学教授、長嶋愛生園精神科勤務、津田塾大学教授、医学博士」。

 ウキペディアには、そうそうたる家族のメンバーも書いてありましたが、あの時代の波の中で自分を貫いた生き様は尊敬すると言う言葉しか思い浮かばない、激しいものだった気がします。

 それはまた、『こころの旅』を読み終えたら、再考することにしたいと思います。先ずは読まなくっちゃ。

2022年2月9日水曜日

 本、『世界の奇談』ー秘められた真実―庄司浅水著 現代教養文庫 社会思想研究会出版部刊、昭和36年初版第11刷

 夫は昭和15年生まれでしたから、これは夫が若いころに読んだ本だと思います。確かに、血沸き肉躍る外国の歴史の逸話集です。

 この本、今でも改定を重ねて何冊も出ているロングセラーのようですが、これが初版です。著者の庄司 浅水という方はこういう奇談集を何冊か出版しているようですが、どんな方なのか気になりますよね。奥書には書物研究家と書いてあります。確かにたくさん本を読んで、たくさんの逸話を知っているという方のようです。

 本には13篇の逸話が載っていて、題名を見ただけでも興味をそそられます。

1と2はロシア革命の話です。1では国王一家を処刑したという処刑人の告白が書かれていて、処刑人は全員殺して、灰になるまで焼いたと今わの際に言ったようです。1958年出版のこの本にはそう書かれていますが、その後、遺体が掘り返されてDNA鑑定がされたというニュースがありました。きっと改訂版には、違う結果が書かれているのでしょう。とにかく古い本ですが、書物研究家の著者の面目躍如というほど、興味深い知識がいっぱいちりばめられています。

 3と4と5と6,7はアメリカ大陸の話です。コロンブスからハイティー、メキシコ、チチェン・イッツア、インカのこわい逸話。

 8はギニアにある、監獄島の話です。ここはフランス、イギリス、オランダに分割されているのだそうですが、その中のいくつかの島は監獄として使われていたのだそうです。死ぬまで出られない監獄だそうです。

 こんな話、ごく最近でも聞いた気がします。それはアジアから船に乗ってやってくる移民を受け入れないオーストラリアが近くの島に居留地を作って閉じ込めているという話でした。移民受け入れをしない日本でも入管施設で、長期に渡る無期限の収容をして、問題になっています。あとはキューバのグアンタナモの監獄なども浮かんでくるような話でした。

 9、10、11、12、13は中東の昔の話です。その時代、エルサレムに住んでいたユダヤのダビデ王は人類始まって以来の世界一の金持ちだったのだそうです。ここを読むと、やっぱり金持ちとユダヤ人て縁が深いのだなあと思います。

 さらに、紛争ばかりしている感じのエルサレムがそんなに大きな都市だったのだと初めて知りました。

 その息子ソロモン王が建てた神殿のうえに、今はイスラム教のモスクが建っているんだそうです。そのモスクの下にソロモン王の秘宝が眠っているとかいないとか。いつの世もお金のある所には、人が集まり、争いが起こるのでしょう。

 サロメの話も出てきます。殺されたバプテスマのヨハネはイエスの先行者だったようです。この辺りは著者の聖書の知識が遺憾なく発揮されています。昔、英文科の必修科目に聖書があったのを思い出しました。あの頃は興味がなかったのですが、あちらの方では聖書は多方面に多大な影響があったのでしょう。

 パルミラ(シリア)の女王ゼノビアは、ローマに抵抗して、パルミラに大都市を築いた砂漠の女王の戦いの一生の話です。

 最後はライ病の島の話。この島はクレタ島の近くにある美しい島だそうです。古来から、ライ病は感染症として恐れられ、日本でも隔離政策がとられました。この本が出版された1957年までには特効薬も開発され、光が見えてきた時期のようです。どこかコロナのパンデミックを想起させます。

 知識がいっぱいのようで、あとがきにも、死海文書や雪男の話など、これから書きたいことが点描されていました。

 目からウロコ!という話が多くて、人間は恐ろしいという感じの世界観が広がった気がしました。

2022年2月2日水曜日

英国ミステリー噂話 クロッシングライン

 ヨーロッパの国境をまたぐ事件を捜査する国際警察の話なのです。で、言語は英語なので、当然英国ミステリーだとばかり思って見ていました。

 集められた刑事たちは、フランスの警視とアメリカの元刑事、ドイツのコンピューターに精通した刑事、イタリアの女性刑事、イギリスとアイルランドの出身の男女二人、フランスの女性刑事。始まってまもなく二人の刑事が殉職してしまうという、ちょっとハードな展開でした。

 で、やっぱり、このころから、ちょっと英国ミステリーっぽくないなと感じ始めて検索で調べてみたのです。

 『クロッシングライン 〜ヨーロッパ特別捜査チーム〜』は、アメリカ・NBC放送のクライム・サスペンス。とウィキペディアには出ていました。

 放送チャンネルはRai 2 (イタリア)、TF1 (フランス)、NBC (U.S.)、Sat.1 (ドイツ)の四か国のようです。

 確かに情緒たっぷりに描く英国ミステリーと違って、事件もきついし、テンポも速い、チームの構成員の専門性が強いし、それぞれに訳ありで、それでいて、結束が強い。そういうところをみると、『メジャークライム』を想起してしまいます。

 こういうのがアメリカのドラマ作りの主流になっているのでしょうか。

 昔、ケーブルテレビで見たときは、あまりにも速いテンポに圧倒されて、一話でやめてしまったのですが、メジャークライムで、テンポになれたせいか、今回はついていけて、というより、いわゆる、くせになりそうという感じです。

 確かに、警察社会はただ単に一つの犯罪を追いかけるというより、チームのそれぞれの人間性がぶつかりながら、交錯しながら、科学捜査を駆使して、結果として仕事を成し遂げるというののほうが現実味があるような気がします。だから、圧倒的なスターはいらないのかもしれません。

 人間味のある刑事たちが、それぞれ葛藤しながら、チームとして事件を解決していく。まさに、『メジャークライム』の世界です。

 シーズン1は2013年で、2014年、シーズン2、2015年、シーズン3が放送されたようです。

 ちなみに『メジャークライム』の放送期間は、2012年8月13日ー2018年1月9日だそうです。