百万本のバラ
『日本語でも歌われる「百万本のバラ」などのヒット曲で知られるロシアの国民的女性歌手アーラ・プガチョワさん(73)は18日、ウクライナ侵攻を批判した夫(人気テレビ司会者のマクシム・ガルキンさん)がロシア政府からスパイを意味する「外国のエージェント(代理人)」に指定されたため「夫への連帯として、私も指定してほしい」と訴える声明を発表し、侵攻を批判した。』
というネット記事を見て、「え、百万本のバラって、加藤登紀子さんの歌ではなかったの」と思ったのは、無知な私だけだったでしょうか。
そこで、無知な私はまたウキペディアを開いて、勉強させていただきました。
『「百万本のバラ」の原曲は、1981年にラトビアの放送局「ミクロフォンス (Mikrofons)」が主催する歌謡コンテスト「ミクロフォナ・アプタウヤ(ラトビア語版、英語版、ロシア語版) 」に出場した『Dāvāja Māriņa(マーラは与えた)[1]』というラトビア語の歌謡曲である[2]。作曲はライモンズ・パウルス(ラトビア語版、英語版、ロシア語版)、作詞はレオンス・ブリアディス(ラトビア語版、英語版、ルーマニア語版) [3] による[4]。このコンテストにおいて、アイヤ・ククレ(ラトビア語版、英語版、ロシア語版)と、終盤の少女のパートを担当するリーガ・クレイツベルガ (Līga Kreicberga)(当時9歳)の2人によって歌唱された『Dāvāja Māriņa』は、優勝した[5]。
歌詞の内容は、後述のロシア語版やその内容を踏襲した日本語版とはまったく異なり、大国にその運命を翻弄されてきたラトビアの苦難を暗示するものだった[4]。』
つまり、ロシアの国民的歌手と言われたアーラ・プガチョワさんが歌ったのは、加藤さんと同じ恋の歌。では同じ曲で、最初の歌はどんな歌だったのでしょう。
『ラトビア語版原曲に基づく訳詞
小田陽子 - ラトビア文学者の黒澤歩と小田陽子による共訳。タイトルは「マーラが与えた人生」(2006年 、アルバム「ROMANCER」に収録)』。脚注には『「マーラ」はラトビアの神話に登場する女神で、ラトビア神話の神々のなかで最高位にある神のひとりである』という記載もありました。
動画では、小田陽子さんが歌っているみごとな訳詞の歌と、アイヤ・ククレと、リーガ・クレイツベルガの悲しげな、ソフトな歌の両方を聞きました。優勝しただけのことはあると思わせられます。歌詞の意味はわからないのに、また聞きたいと思いましたから。
詩はウキペディアには載っていないので、別に探しました。訳詞をして、さらにその背景を書いている方がいました。
『マーラが与えた人生
訳 楓
幼い頃のこと 悲しみが襲うと
私は母の胸で 抱きしめてもらう
母はやさしく笑みを浮かべ 私の耳元で囁く
マーラは与えた 娘に命を
与えて、与えて、与えてくれた
マーラは忘れた 娘に幸を
忘れて、忘れて、忘れさられたままに
時が過ぎて母は この世にもういない
いまは一人きり 一人で生きていく
寂しさに襲われると 母の囁きをつぶやく
マーラは与えた 娘に命を
与えて、与えて、与えてくれた
マーラは忘れた 娘に幸を
忘れて、忘れて、忘れさられたままに
忘却の彼方に 置き去りにしたものが
突然よみがえり 私は身がすくむ
私の娘が笑みを浮かべ あの囁きを口ずさむ
マーラは与えた 娘に命を
与えて、与えて、与えてくれた
マーラは忘れた 娘に幸を
忘れて、忘れて、忘れさられたままに
ラトビアは、1918年11月に独立を宣言したものの1920年まで内戦状態が続き、
1940年には独ソ密約により旧ソ連の領土となりました。
そして、1941年から1945年までナチス・ドイツの占領を経て、再びソ連領となりました。
その間、1940年から1949年にかけて約8万にも及ぶラトビア人がシベリアに流刑され、また多くの国民が難民として国外に亡命しました。
この結果、1939年にはおよそ73%いたラトビア民族は、1989年には52%にまで減少しました。
この詩は大国の犠牲となった悲しみの象徴です。
「わが神、わが神、なぜ私をお見捨てになったのですか。」
エストニアでは、ナチの占領期間に1万というユダヤ人が殺され、ラトビアでは約8万5千のユダヤ人が殺されています。
バルトの神話、女神マーラは、ユダヤ人には生も幸も授けず、迫害と死を与えた・・・
1982年
「マーラが与えた人生」は、
ロシアのアラ・ブガチョワの持ち歌「百万本のバラ」にかわりました。
放浪の画家ピロスマニが女優マルガリータのホテルの前を花で埋め尽くしたという伝説をもとに詩を創作しました。
原曲の詩のまま、ロシアで訳すわけにはいかなかったのですね・・・
原曲の詩で、改めてこの曲を聴くと、涙が出るわけが納得です。
薔薇 アンネ・フランク ホロコーストのあとで 「マーラが与えた人生」より』