ドラマの話 この男不熟につき
昔見たドラマで、ずっと覚えているものがあります。いまだによく覚えているのです。小林薫さんの困った顔と引導を渡す中村梅之助さんの厳しい顔。その言葉、『この男不熟につき・・・』、つまり使えないので、放逐する、解雇するというのです。そして、この後、出ていく小林さんの何かほっとしたような顔と、後を追って家を出ていく、多分、中村さんの娘だったと思いますが、奥さんの姿。
今回調べてみたら、『藤堂家城代家老の日誌より(1990・NHK)』とあり、題名は『ドラマスペシャル 不熟につき…』とありました。いくつかの賞もとったようです。
で、なんでそんなに身につまされているのかというと、私も夫も、一応、会社は作ってありましたので、厚生年金ですが、フリーランスのようなものでした。だから、収入も年金も少ないほうです。
で、この歳になって周りを見回してみると、大きな会社で定年を迎え、豊かな貯蓄とそれなりの年金で、生活を送っている方々。共働きで公務員を退職されたご夫婦。羨ましいなと思います。
でも、わが身に置き換えてみると、私たちにはできなかったろうなと思います。『すまじきは宮仕え』の言葉のように、それができない人もいるのです。
例えば、芸能人はお金がたくさん入ってうらやましいと思いますが、毎日あんなにきれいにお化粧をして、ドレスアップして、きついパンプスを履いていることなんて、私にはできないだろうと思います。加えて対人関係に弱点のある私が、毎日人の中にいることは、若いころでも悩みでした。つまり、私は『この女、不熟につき』だったのです。
だから、若いころはそれなりに苦労しましたが、今は低収入でも仕方がなかったと思っています。その分、人にあまり気を使わずに済んだこと、好きなドラマを見られていること、幸い生活に困らないでいられることを幸せなことだと思えています。