2013年12月27日金曜日

名優とは

  昔、声帯模写の先代江戸家猫八さんの出ていたドラマを見たとき、この人はすごい俳優にも成れる人だと思ったことを覚えています。
  江戸家猫八さんと言えば、昔々、『お笑い三人組』という長寿番組に出ていましたし、そこで有名になったのですが、私はその時から、何か違和感を持って見ていたのです。お笑いにしては眼が鋭すぎるし,顔が暗すぎるのです。子供心に、どこか作っているお人好しという感じがしていました。
  その猫八さんが、サスペンスのようなものに出ていて、悪役をやっていたとき、『すごい』と思ったのです。『なぜか』、そのときは分かりませんでした。
  でも、今なら、何となく分かるような気がします。きっと、あれが猫八さんの『地』の部分なのだろうと思えたのです。人間は普通の生活では地を出さないように、用心して生きているのです。つまり、演技をして、自分を押さえながら生きているのです。ところが実際は、人間は表に見せる良い面と内に抑えて見せない悪の面があるのです。そう言う面が、役を演じることでほとばしり出たと言えるのではないでしょうか。
  つまり、名優とは、心のうちに、様々な灰汁を持ちながら、現実世界では、上手に切り替えて、まるっきりお人好しのように振る舞える人です。そうすると、猫八さんは名優ではない、正直な人だったかもしれません。
  それに引き換え、あれだけ、悪人から善人までいろいろな役をこなして、エピソードもいっぱい残して亡くなった三国連太郎さんが、徹子の部屋に出たときの、『もの柔らかさ』を奇異な眼で、違和感を持って見てしまいましたが、そう言うことだったのだと今は思います。あれが、この世で生き残るために本人が演出した演技だったのでしょう。そして、地は様々の役を演じるときに出していて、それである意味、ストレスを発散していたのだろうと思います。
  これは歳を重ねて分かることです。歳を取るということは『何となく分かる』ということが増えて来るのです。悪いことばかりではありません。

2013年12月21日土曜日

著者が買い上げ 

 昨年七月の初売り上げから一年目,また新しいストーリイが生まれました。
  高い値段を付けてあった限定版の専門書が売れたのもニュースですが、それよりすごいニュースは、千円を付けてあった小さな、装丁も地味な本が売れたことでした。本当に思わぬ本が売れるのです。
  その本は、元新聞記者が書いたと言う時事エッセイでした。ちょっと読んだのですが、私たち団塊の世代の、もう一つ前の世代のことだったと思います。使用感もうすく、アマゾンにも載っていませんでしたので、小さい本でも千円にしておいたのですが、正直、売れるとは思っていませんでした。
  注文が来た時、本を出して来てみましたら、あっと驚きです。
  その本は、鈴木さんに謹呈された本で、著者のサインと判が押してありました。夫がその鈴木さんから戴いたらしいのです。『しまった』と思いましたが、後の祭り、仕方が無いので、正直に本の様子を書いて、「それでも良かったら」と書いてメールを出しました。
  そしたらなのです。注文者は著者の娘さんで、お父さんに頼まれて、これではない、別の昔の著作を探していたのだそうです。それでこれに行きあたったというのです。まるで小説のような話で,この本のことは著者自身も忘れていたということでしたが、鈴木さんのことは、思い当たるらしく、こんな職業の人ではなかったかと聞いて来ました。夫に確認しましたが、「その鈴木さんは知っているが、本をくれたのがその人かどうかは忘れてしまった」ということでした。
  私は夫が昔、遊び歩いていた北の方の、著者が勤めていたことのあるという病院の名前を夫から聞いたことがあったので、そちらの方ではないかと言いましたが、定かではなく、とにもかくにも、本は著者の手元に帰ったのです。
  戴いた本だし、注文者は著者だし、『どうしようかな』と思いましたが、千円を戴きました。むしろ千円にしておいて良かったと思いました。余り安くしておいたら失礼だったろうし、高くしておいたらお金は取れなかったろうと思います。商人らしく、『いけしゃあしゃあ』と著者に売りつけてしまいました。

2013年12月12日木曜日

年を重ねると、皆同じになる

  私みたいにテレビばかり見ていると気付くのですが、若い頃はきれいな人と、そうでない人の差が歴然です。
  ちょっと海外の例ですが、あの美しい、イングリット・バーグマン主演の『ガス灯』に、若き日のジェシカおばさん、アンジェラ・ランズベリーさんが出ていたのです。こんな事を言っては失礼この上ないのですが、それは確かに役柄通り、美しさも主人と小間使いの差でした。
  でも、今比べたらどうでしょうか。バーグマンさんが生きていたら、ジェシカおばさんとそんなに変わらないと思いますよ。
  ジェシカおばさんにも、ときどき、ゲストで『若い頃はきれいだったろうな』と思わせる老女優さん達が出演されますが、今となってはジェシカおばさんとそんなに変わらない美しさです。
  だから何を言いたいかと言うと、ちょっと痩せて、姿勢よく、身ぎれいにして、きびきびと行動すれば、私のように若い頃は箸にも棒にもかからなかった人でも、美しかった人と互角に対峙できるのだという事です。歳をとると、そんなに変わらないのです。
  だから、歳をとっておしゃれになる人が多いのではないでしょうか。
  かくいう私も、「身体は一つよ」と娘に言われながら、お下がりもお上がりも貰って、ワードローブを一杯にしています。たくさんあれば、どれかとどれかが合うのです。それで大成功、洋服を買う必要なんか全く無くなります。その為には痩せて、どれでも着られるようにしておかなければなりません。この努力だけで良いのです。

2013年12月5日木曜日

本や開店一周年

  開店は昨年の六月二十二日でした。いろいろあったせいもあって、あっという間に一年が過ぎてしまいました。誰も気にしてはいないでしょうが、年次報告を出さないといけません。おかげ様でたくさん買って頂きました。年間総売上は十二万五千円、およそ三十冊。仕入額は考慮に入れませんが、経費を差し引いても、十二万円くらいの純利益になったと思います。もちろん、夫と私が細々と経営する会社の経理に合算しました。
  ところがです、新しいものがどんどん打ち込まれている間は、しかも、それが値段も判らない素人で、グンと安かったりした時期は週に一、二件の注文が来て、さほどお金にはならなくっても忙しい、忙しいと言っていたのですが、一年目も近付いた五月、六月になると、月に一、二件の注文がくれば良い方という干上がった状態になりました。
  一年間の経験で、だいたいの値段の付け方が判ってきましたので、一般的な値段になったのでしょう、お客様には高い値段設定になってしまったのかも知れません。
  家のショップ、エブリカラーには二十二万円のレア本を筆頭に十万円台、数万円を付けたレア本もありますが、そういう本は専門性の高い一冊しか売れませんでした。高くても五千円くらいまでなら何とか売れました。世の中堅実なのです。まあ、それも良いでしょう、動画の絵描きに専念しましょう等と負け惜しみを言っていましたが、ある日ふと気がついたのです。
  それは、まだ違和感の残るお腹の筋肉にむち打って、家の草取りをしていた時です。『そうか、この時期は草取りの時期なんだ』と思ったのです。私だって、草取りに忙しくって、絵の一枚も未だ描けていないのですから。世の中の皆さんだってそうなはずです。
  加えて、野菜等も実り出す夏になるとみんな忙しく身体を動かすようになるのではないでしょうか。そうするとコンピューターなんかあまりさわらなくなるのです。昨年も、夏には、商品は揃っていなかったとは言え、お客さんはほとんどありませんで、注文が来るようになったのは暮れ頃からでした。
  そういう事ですから、ここは気にしないで、草取りも家事も忙しいのですが、絵を描く事に専念しましょう。少なくとも一個の動画くらいは完成させたいものです。