2013年12月21日土曜日

著者が買い上げ 

 昨年七月の初売り上げから一年目,また新しいストーリイが生まれました。
  高い値段を付けてあった限定版の専門書が売れたのもニュースですが、それよりすごいニュースは、千円を付けてあった小さな、装丁も地味な本が売れたことでした。本当に思わぬ本が売れるのです。
  その本は、元新聞記者が書いたと言う時事エッセイでした。ちょっと読んだのですが、私たち団塊の世代の、もう一つ前の世代のことだったと思います。使用感もうすく、アマゾンにも載っていませんでしたので、小さい本でも千円にしておいたのですが、正直、売れるとは思っていませんでした。
  注文が来た時、本を出して来てみましたら、あっと驚きです。
  その本は、鈴木さんに謹呈された本で、著者のサインと判が押してありました。夫がその鈴木さんから戴いたらしいのです。『しまった』と思いましたが、後の祭り、仕方が無いので、正直に本の様子を書いて、「それでも良かったら」と書いてメールを出しました。
  そしたらなのです。注文者は著者の娘さんで、お父さんに頼まれて、これではない、別の昔の著作を探していたのだそうです。それでこれに行きあたったというのです。まるで小説のような話で,この本のことは著者自身も忘れていたということでしたが、鈴木さんのことは、思い当たるらしく、こんな職業の人ではなかったかと聞いて来ました。夫に確認しましたが、「その鈴木さんは知っているが、本をくれたのがその人かどうかは忘れてしまった」ということでした。
  私は夫が昔、遊び歩いていた北の方の、著者が勤めていたことのあるという病院の名前を夫から聞いたことがあったので、そちらの方ではないかと言いましたが、定かではなく、とにもかくにも、本は著者の手元に帰ったのです。
  戴いた本だし、注文者は著者だし、『どうしようかな』と思いましたが、千円を戴きました。むしろ千円にしておいて良かったと思いました。余り安くしておいたら失礼だったろうし、高くしておいたらお金は取れなかったろうと思います。商人らしく、『いけしゃあしゃあ』と著者に売りつけてしまいました。