本、『世界の奇談』ー秘められた真実―庄司浅水著 現代教養文庫 社会思想研究会出版部刊、昭和36年初版第11刷
夫は昭和15年生まれでしたから、これは夫が若いころに読んだ本だと思います。確かに、血沸き肉躍る外国の歴史の逸話集です。
この本、今でも改定を重ねて何冊も出ているロングセラーのようですが、これが初版です。著者の庄司 浅水という方はこういう奇談集を何冊か出版しているようですが、どんな方なのか気になりますよね。奥書には書物研究家と書いてあります。確かにたくさん本を読んで、たくさんの逸話を知っているという方のようです。
本には13篇の逸話が載っていて、題名を見ただけでも興味をそそられます。
1と2はロシア革命の話です。1では国王一家を処刑したという処刑人の告白が書かれていて、処刑人は全員殺して、灰になるまで焼いたと今わの際に言ったようです。1958年出版のこの本にはそう書かれていますが、その後、遺体が掘り返されてDNA鑑定がされたというニュースがありました。きっと改訂版には、違う結果が書かれているのでしょう。とにかく古い本ですが、書物研究家の著者の面目躍如というほど、興味深い知識がいっぱいちりばめられています。
3と4と5と6,7はアメリカ大陸の話です。コロンブスからハイティー、メキシコ、チチェン・イッツア、インカのこわい逸話。
8はギニアにある、監獄島の話です。ここはフランス、イギリス、オランダに分割されているのだそうですが、その中のいくつかの島は監獄として使われていたのだそうです。死ぬまで出られない監獄だそうです。
こんな話、ごく最近でも聞いた気がします。それはアジアから船に乗ってやってくる移民を受け入れないオーストラリアが近くの島に居留地を作って閉じ込めているという話でした。移民受け入れをしない日本でも入管施設で、長期に渡る無期限の収容をして、問題になっています。あとはキューバのグアンタナモの監獄なども浮かんでくるような話でした。
9、10、11、12、13は中東の昔の話です。その時代、エルサレムに住んでいたユダヤのダビデ王は人類始まって以来の世界一の金持ちだったのだそうです。ここを読むと、やっぱり金持ちとユダヤ人て縁が深いのだなあと思います。
さらに、紛争ばかりしている感じのエルサレムがそんなに大きな都市だったのだと初めて知りました。
その息子ソロモン王が建てた神殿のうえに、今はイスラム教のモスクが建っているんだそうです。そのモスクの下にソロモン王の秘宝が眠っているとかいないとか。いつの世もお金のある所には、人が集まり、争いが起こるのでしょう。
サロメの話も出てきます。殺されたバプテスマのヨハネはイエスの先行者だったようです。この辺りは著者の聖書の知識が遺憾なく発揮されています。昔、英文科の必修科目に聖書があったのを思い出しました。あの頃は興味がなかったのですが、あちらの方では聖書は多方面に多大な影響があったのでしょう。
パルミラ(シリア)の女王ゼノビアは、ローマに抵抗して、パルミラに大都市を築いた砂漠の女王の戦いの一生の話です。
最後はライ病の島の話。この島はクレタ島の近くにある美しい島だそうです。古来から、ライ病は感染症として恐れられ、日本でも隔離政策がとられました。この本が出版された1957年までには特効薬も開発され、光が見えてきた時期のようです。どこかコロナのパンデミックを想起させます。
知識がいっぱいのようで、あとがきにも、死海文書や雪男の話など、これから書きたいことが点描されていました。
目からウロコ!という話が多くて、人間は恐ろしいという感じの世界観が広がった気がしました。