2016年4月14日木曜日


ムヒカ大統領

 遠いウルグアイから奥さんとともに、今、日本に来ています。八十歳だそうです。地球の反対側からですよ。お元気です。
 池上彰氏の特番を見たんですが、二十代までゲリラ活動をしていたんだそうです。十三年の獄中生活の後、四十歳で釈放され、やっと普通に政治活動を始めたらしい。それもこれも貧しさを無くするために。
 顔も体型もそうですが、柔らかい人かと思っていたら、とんでもありません。お話には一本筋が通っていますし、決して宗教には逃げ込まないようでした。現実世界で、幸せを求める方法を教えてくれているのです。足るを知ると言う事だけではなく。
 別の局でしたが、心に残ったエピソードは、いつも、友人がくれたという青い車に乗っているそうです。それをアラブの大富豪の息子が欲しいと言い、父親が巨額のお金を提示したというのですが、売らなかったと言っていました。『売ってしまったら、車をくれた友人の心を傷つけてしまう』からだという事でした。いつも辛口のコメンテーターが、『僕なら売って、そのお金を寄付する』と言っていました。はじめは私もその方が合理的かなと思いましたが、大統領の話を聞くたびに、考えが変わって行きました。この友情の持つ幸せはお金には換えられないのです。この幸せの感情の塊が総てなのです。いくら多額でも傷ついた友情は一瞬のお金では買い戻せないのです。
 私が今までに感じた事は、私がこの年齢になっていたから感じられた事なのかも知れないとも思います。
 別な番組でしたが、永平寺で沢庵を切るボランティアをしている同年代の女性が話していました。この沢庵は種を蒔き大根を育ててくれた人がいて、干してつけてくれた人がいて、ここまで持って来てくれた人がいて、多くの人が関わって来てくれて、初めて自分がここで切らせていただいている。そう思うとありがたくって涙が出ると言っていました。人は人がいなくっては生きて行けないのです。
 爆弾を作るよりも、もっと貧しい人々のためになる事はあるのではないでしょうか。世界の情勢を見ていてもわかるように戦争が貧しい人々を作り出しているという事もあるんですよね。
 そんな大それた事はできないですけれども、私は一人でも二人でも幸せになってもらえるように、できるだけニコニコと挨拶し、できるだけ文句を言わずに家族の役に立つようにしています。それもこれも、愚かな私は若い頃には気づかなくって、大それた事などできないとわかったこの歳になって理解できたのです。
 ムヒカ大統領が言うように、金持ちが豊かとは限らないのです。見渡せば家族や友人に囲まれている私は豊かなのです。