2018年10月19日金曜日

『木靴の樹』

 (きぐつのき、L'Albero degli zoccoli)は、1978年製作のイタリア映画で、原作・監督はエルマンノ・オルミである。』『映画の題材は20世紀前半の農夫の生活である。イタリア・ネオレアリズモ(新写実主義)の流れをひいて貧しいものの暮らしに焦点を当て、いろいろな場面で本物の農夫や素人を起用した。カンヌ国際映画祭のパルムドールやセザール賞の最優秀外国映画賞をはじめ14の賞を受賞した。原作は東ロンバルディア方言を使用している。』

 この映画を見てしまいました。40年も前の映画だったんですね。どうりで、白黒だったし、Jコムオンデマンドで無料だったんです。それでも、どこかでこれがカンヌ国際映画祭のパルムドールを取ったと聞いて、見る価値があるのかなと思っていたのです。
 暗いし、はじめは状況がわからないし、でも、ロンバルディアの田舎の話だと説明がありました。ロンバルディアはミラノから船で三時間くらいで行けるところらしいと後でわかります。そこに4組だか、5組だかの家族が長屋のようなところに住んでいるのです。みんな小作人で、広い土地を持っている地主は大きな家に住んでいて、土地を耕させ、高額な小作料を取っていて、逃げ出せないようにしているのです。
 やがて、それぞれの家族の問題がゆっくりと説明されていき、ああ、これが寡婦家族とか、これがダメ家族とか、わかってくるのですが、夜の娯楽のために家族たちは一か所に集まって祈ったり、話したり、お茶を飲んだり、あまりに悠長で、途中で私は洗濯しに行ってしまいました。
 その中でも、メインのストーリーになるのは小さな子供のいる家族です。学校に行かせなさいと神父様に言われるのです。赤ん坊も生まれるのにと言いますが、それでも行かせる事になり、子供は毎日田舎道を学校に通います。
 ある日の帰り、木靴が割れてしまいます。そのまま縛って履いて帰ってくるのですが、足が傷ついてしまいます。父親は、赤ん坊を生んだばかりの母親には言うなよと言って、その夜、川岸の木を切って息子に木靴を作ってやります。これが大問題だとは、現代の私たちには思いもよりません。でも、ここは川岸の木一本も地主のものなのです。やがてばれて、家族は追い出されてしまうのです。「赤ん坊もいるのに死ねと言うのと同じだ」と憤りながらも、他の家族はどうすることもできずに、息をひそめて、少年が泣きながら馬車に乗り、去っていく家族の気配を感じ取っています。
 神父様、どうにもできなかったのかなと思ってしまいましたが。
 パワハラって、昔からあったんですね。
 今、サウジの皇太子のパワハラがジャーナリストの殺害にまで行ってしまった話が取りざたされていますが、お金と力を持っている人たちは何でもできる、自分の意に従わなければ、死ねということだってできると思ってしまうのですね。
 みんな、一度は貧乏を経験すべきですね。私が言うのもおかしなものですが。