2019年9月12日木曜日

口の悪い人

 週一プールに行った時のことです。着替室にいたのは私とその女性だけでした。私の水着はけっこうピチピチで水泳選手のように着るのに苦労するタイプの物でした。苦労して何とか着終えたのをちょっと恥ずかしく思って
 「痩せなくっちゃダメですね。」と声を掛けたのです。
 「毎日三十分歩けば痩せるわよ」と彼女は言いました。
 「今、暑いから」とやりたくない私。
 「そんな怠け者じゃダメよ」と彼女。見ると確かに彼女の身体は年齢のわりにはしまって居ました。
 「暑かったら、朝の涼しい時にやればいいのよ」と彼女。
 「私も毎日ヨガはやっているんですよ」と私。
 「私も週三回やっているわよ。どこでやっているの」と彼女。
 「テレビのヨガ番組で」と私。
 「そんなんじゃダメよ。お金を掛けなきゃ。お金を払っているから勿体無いから頑張ってやるんだから。」と彼女。
 「お金ないから、」と私。
 「お金はあるわよ。」と彼女。
 「いかにお金を使わずにやるかも呆け防止になるんじゃないですか」と私。
 してやったりと思ったのですが、彼女は次の手を見つけていました。
 「あなたのその頭、自分でやったの。刈り上げになっているから。」と、ちょっと上から目線でした。
 「そうです。暑いから。」
 そこで私はタオルが見つからずに右往左往。なんのことはない、直ぐ前のベンチの上にありました。
 「ぼけの始まりね」と彼女。
 その言葉をあとにして、這々の体でプールへと向かいました。
 後で、ああいう物言いは誰かに似ているなと思いました。野村沙知代さんですよね。口が悪くて皆に避けられていた。それでもどこか憎めないところがあって、野村監督には愛されていた。
 「お金はあるわよ」と言いきれるほど、一生懸命頭をつかって生きて来たのでしょう。
 ヨガだけでなく、歩くのもやって見るかと思わせられました。