東北の人
西村京太郎さんが、1981年に第34回日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞したという『終着駅殺人事件』をTverでみました。十津川警部シリーズです。それで西村さん自身が東北の人なのかなと思って調べてみましたら、十津川警部と同じで東京の人でした。
そのドラマでは、亀井刑事が青森の出身という設定になっていて、東北の人の特徴を代弁していました。情に厚くって、約束は守る、助け合う、ちょっと人恋しいなどなど。
私も最近、この『東北の人』の話を聞いたことを思い出したのです。
場所は、工事期間中に通っていたトレーニングルームでした。前にも書きましたが、ごみ焼却炉の熱を利用したプールとお風呂があって、以前はデイケアセンターだったところがトレーニングルームに変更されたという公立の福祉施設なので、お年寄りがたくさん通ってきていて、バスの便もあり、皆さん、お風呂やプールを利用したり、トレーニングルームを利用したり、休憩室でテレビを見たり、囲碁をしたり、講座に参加したり、時間のある人はお弁当を食べたり、昼寝をしたり、ゴールデンウイーク中はお子さん連れも何組かいましたが普段はそんなに込み合ってもいません。
そこでよくお弁当を食べていた同年代くらいのおばあさん二人と話をしたら、二人とも東北の人だったのです。
一人は山形の人で、山形で工場労働者として働いていたが、老年になり、息子がこちらで働いているのでこちらに来たと言っていました。でも、悩みがあって、「一日のうちの長い時間をここで過ごしているのだが、なかなか皆さんと打ち解けられない、言葉が違うからかな」と言っていました。確かにもごもごと話す感じでした。「山形はいいよ。雪は多いけど、雪下ろしなんかみんなで手伝って。」
『ああ』と思って言いました。「茨城は東京に近いし、昔から話し方が喧嘩しているようだと言われるからね。」
もう一人の人も嘆きました。「初めて来たとき、隣のうちの庭が草だらけだったのよ。それで入って草を取ってあげたら、そこのご主人が『人の家の屋敷に入って余計なことをしないでくれ』って言って怒鳴り込んできたのよ。」これもありそうなことだと思いました。それでいいました。「茨城は豊かなのよ。だからみんな、人に助けてもらわなくっても生きていける。威張っているのよ。人に頭なんか下げない。」その人は青森の人で、やはり次男がこちらで働いているのでこちらに来たけれど、長男が受け入れてくれるなら青森に帰りたそうに言っていました。
みんな生まれ故郷を離れて生きていくのはさみしいのでしょうね。