2015年8月20日木曜日


英国ミステリー噂話、フォイルの戦争、刑事フォイル

 五シリーズで終わるはずの『刑事フォイル』の続きが放送され始めました。辞表を叩き付けてから一年後の話です。
 最初は、あまりにも地味なタイトルと、宣伝の映像に、『戦争ものなんて嫌だな』と敬遠していたんです。意外とそう言う人が多かったんじゃないでしょうか。どうして原題通り『フォイルの戦争』にしなかったんでしょう。
 それがあるとき、読者批評で『フォイルの人間性に感動した』と書いてあったのを見て、一話くらい見ようかという気になって見て、やっぱり私も感動したのです。逃さず見るはめになってしまいました。
 歴史の中のストーリーもさることながら、『誰に対しても、無理強いしない、正しい評価をする、明晰な頭脳で事件を解決する』というフォイルのスタイルに、私も『見習わなければ』と思うくらい感動してしまったのです。
 フォイルの妻は二十代の一人息子とフォイルを残して亡くなっています。フォイルの動揺は大きいものだったらしいと私達にわかるような仕立てになっていますが、それを黙って受け止めて一人暮らしをしています。
 大げさにしない事で、人に何かを押し付けない事が友人関係も仕事関係もスムーズに行かせている理由なのかも知れません。人材の少ない時代によい部下とよいチームを組む事ができています。趣味は釣りで、孤独に楽しめます。どこかに英国紳士と書いてありましたが、どの国にいても理想像です。
 大きなお世話かもしれませんが、この役作りは、ポアロでもないし、フロストでもないし、モースでもありません。フォイルなのです。英国ドラマの歴史に残りそうです。
 ストーリーも、ちょっと異常さの感じられる事のあったバーナビー(ミッドサマー・マーダー)やルイス(オックスフォード・ミステリー)よりも、歴史の現実の中で、みんな賢明に生きている、フィクションとノンフィクションが混じりあった仕立てで共感できます。これがアンソニー・ホロヴィッツの真骨頂なのでしょうか。