2015年10月22日木曜日


老人の話

 市の保健センターにマッサージ機とヘルストロンを使わせてもらいに週に何日か行っている話しはしましたが、そこはゴミ焼却の熱を利用したプールとお風呂が併設されていて、施設を仕切って、老人のデイケア施設も稼働しています。
 そんな施設ですから、利用者は老人が多く、同好の士を求めて、囲碁クラブや陶芸教室、カラオケなど様々な同好会が活動しています。
 で、ご老人は仕事がありませんし、体にいろいろ支障が出てきますから、私のように、マッサージ機やヘルストロン、時にはプールやお風呂も一緒に利用して、おしゃべりをしながら、友人関係を築いている人もたくさんいます。
 そんな漏れ聞こえて来るご老人方の話を、私はただただ感心して、時には相づちを打ちながら聞いているのです。
 最初にお話しした方は毎週二回、碁を打ちに来ているという事でした。義兄もそうですが、囲碁に夢中のご老人って多いんです。義兄など、新聞の切り抜きを何年分も採ってあると言っていました。その方はここの他にも、近くの公民館で週一回集まってやっていると言っていました。
 その方は東京出身で、年齢的に戦争中に学齢期だったと思うのですが、空襲でお母さんを亡くされた事、シベリアへ抑留されたおじさんの話、身を以て味わった復興の苦労など、おしゃべりで頭も良く、記憶力も確かなので、いわゆる語り部に最適と思われるのですが、子供達は、「孫達には話してくれるな」と言うのだそうです。小さな子供達には残酷さがあまりに身近ぎるのでしょう。わかる気もするのですが、でも、彼の記憶は十年後には、もう無いのです。
 良くおしゃべりをしていた人が、癌で入院してもうダメだろうと話している人もいました。「そう言えば、あの人はどうした」と聞くスパンが短いような気がします。つまり友人関係でいる時間が限りあるのです。
 しばらく入院していて、久しぶりに来た人に、自分も癌だという人が、「もうあきらめた」と言っていました。今は総ての薬を断って、それで死んだらそれでいいと言っていました。夫も肺に影があると言われた時に、手術はしない、抗がん剤治療は受けないと言っていましたが、その方は、総てやってみて、かえって具合が悪くなって決断したようです。
 治療を拒否した方がいいという、お医者様達の書いた本をたくさん読んでいて、この人はこういう事を書いている、人体には病気をやっつける機能がついていて、例えば風邪なども、抗生物質で治そうとすると、病気と闘う菌まで殺してしまうと言っていました。確かにそうですよね。
 これだけ勉強した治療拒否の論調も、多くの人に知られる事も無く、彼の終わりと共に消えて行ってしまうと思うと、惜しいですね。
 皆さんも私もあとの残りは少ないのです。よくよく、聞き耳を立てて聞いていようと思います。