2015年11月12日木曜日


名優について

 歳を取ってミステリーを見る機会が多くなり、好きなシリーズになると何度でも見てしまうのですが、寂しい事に、みんな歳とって行ったり、亡くなってしまったりするのですよね。先日はポアロが終わったばっかりなのに声優の熊倉一雄さんが亡くなりました。
 フロスト警部なんか、見ている間に歳とって行きますし、フォイルも戦時中のフォイルと戦後のフォイルを見ると、明らかに老いが感じられます。それなのに、ストーリーはより過酷になっているのですから、物語の世界は歳を取らないのです。
 この間、俳優の鈴木浩介さんと田中哲司さんの出ているトーク番組を見ましたが、最初一緒に演劇を志した同期の人で、今も役者さんをしている人はほとんどいないと言っていました。それほど、人間はどんな道でも選べてしまうのでしょう。
 田中哲司さんが、銭湯に行くお金もなくて、台所で体を洗っていたという苦労話をしていましたが、そんな思いをしてまで、役者であり続けた人だけが残るもののようです。
 だって、若い人たちの演技って、心もとないですものね。きれいなタレントさん達が、若くてきれいというだけで、たくさん、いい役に配置されますが、見るからに初々しいというか、なじんでいないというか、そこから、俳優を続けて行く事は、なかなか大変のようです。
 だからやっぱり、ミステリーの主役や重要な役を演じられる頃には、歳を取り、いかにも市井にいる普通の人のように演じられるようにならないといけないのでしょうね。そこまで続けられるかです。
 私も、やりたいと思った時がありましたが、私にはやっぱり無理だったと思います。市井にいながらも、どれだけふらふらといろんな事に目移りしたでしょうか。一つの事に精通なんて思いも及ばない事でした。だって、人の目も気になりますし、壁にぶつかるといつも逃げていましたから。
 名優となるにも、強い意志と、度胸、つまらない事を恥と思わない大らかさ、図太さが必要だなと思います。そうして、修練して、やがて名優といわれるようになるのでしょうから、歳をとってしまうはずです。