ゴキブリの生命力
涼しくなって、家の中でゴキブリを見る機会も少なくなりましたが、夏の間、涼しいからと真夜中に起きて、居間の電気をつけようものなら、数匹のゴキブリが一斉に別方向に向って走り出します。
アレルギー症の家族がいて、殺虫剤の使えない我が家では、昔からゴキブリハウスをあちこちに仕掛けてありました。昔は結構入っていたような気がしますが、いつのころからか、ほとんど入らなくなってしまったようです。今年も一ハウスにひと夏で五、六匹です。これは多いほうです。
で、涼しい真夜中に起きだしてコンピューターをつける私としては見て見ぬふりをするわけにも行かず、古いハエたたきを二本見つけてきて、手元に常備しました。で、エイ、ヤとたたくのですが、結構すばしっこくてたいていは逃げられます。逃げ足の遅い、ドジな奴が私ごときにたたかれて、椅子の横あたりで動かなくなります。私は当然死んだと思って、明日片付けようとそのままにしてコンピューターに戻ってしまうと、翌日の朝にはもういないのです。
最初は、『さては仲間のゴキブリに食べられたかな』と思いましたが、そういうことが二、三度起きると、『あいつ生きてたな』とわかりました。何のことはない、たたかれて気絶していただけだったのでしょう。そういうわけで、私が、この夏に退治したゴキブリもやはり五、六匹です。そして、一晩に四方八方逃げ回るゴキブリはやはり五、六匹いたのです。
ドラマで、「地球上で一番強い生き物は昆虫だ」という人がいましたが、私は最強の生き物と死闘を繰り返していたわけです。昔はゴキブリでも殺すのはかわいそうなどといい子ぶっていましたが、テーブルの上などに二、三匹のゴキブリがはい回っているのを見ると、やっぱり、戦わないわけにはいきません。この間の子連れで家に入ってきたネズミと同じ、人間のおごりを感じて後ろめたい気持ちはありますが、やっぱり殺してしまいました。