2021年10月12日火曜日

 弟への手紙

 先日、お米を持ってきてくれた弟が、「足が冷えて、つって、朝、痛くって死にたくなる。俺は義兄貴の歳までは生きられないだろうな。あと五年かな」と、勝気な彼には珍しく弱気なことを言っていました。

 弟には、心臓や糖尿などの持病の他に、脊椎管狭窄症という病気があって、過去に何度か手術をしました。それでも治らなくって、足を引きずり加減に歩きます。

 それ以来、ずっと心に引っかかって、足の痛い私が、どんなマッサージを毎日しているか、手紙を書いて送ろうか、どんな手紙にしようかと数日考えました。

 でも多分、弟は反発して決してやらないだろうなとわかります。

 二歳違いの二人姉弟の私たちは、年上だから、ひとり息子だからと、常に覇権争いをしていました。寄ると触るとケンカしているのに、いつもそばに寄りたがる、仲のいい姉弟だったと思います。

 性格も顔も全く似ていなくって、弟はスポーツ万能で、全国大会にも出場しましたが、私は食っちゃ寝タイプの何もしない人でした。

 だから、余計、私のアドバイスなんか鼻で笑って聞かないだろうとわかるのです。手紙は即ごみ箱行きでしょう。

 書こうか書くまいか、悩んでいると、だんだんわかってきたことがありました。それは、上から目線のアドバイスなんか、誰にとっても迷惑なだけだということです。ましてや、スポーツ素人の私の付け焼刃の知識など誰も信用しないし、心配の押し付けも反発を招くだけでしょう。

 この歳になって、相手の感情を思いやることを自学したわけです。

 それでも、なんとか、少しは伝えたいと思って、いただき物のお礼のハガキを書きました。そこに、『私も足先がしびれることがありますが、風呂に入った時や、寝る前にマッサージをするといいみたいです。マッサージの仕方はユーチューブの整体やさんにたくさん出ています』と書きました。

 少しでも役に立つといいのですが、実際やっている私でも治ったわけではありません。少し軽減しているかなという感じです。きっと死ぬまで続ける作業なのでしょう。