2012年12月8日土曜日

吉行あぐりさんの本 

 最近図書館で借りて読んだのです。題名は『吉行あぐり 102歳の言葉』(石寒太著)です。
  勿論ご両親もですが、三人の子供さんのうち、お二人は先に亡くなったのです。それでも打ちのめされることもなく、愚痴を言うわけでもなく、淡々と強く生きて来られたのにはどんなコツがあったのだろうと思いますよね。
  その一つは、仕事のようでした。『美容師は天職』と思って、97歳まで続けて来られたのです。その間、三十代で夫に先立たれ、借金だけでなく、愛人まで残されたようです。四十代で再婚し、90歳で二度目の夫を見送って、また吉行の性に戻ったと言います。私から見れば充分波瀾万丈で、その間、ずっと働いて来られたわけですから、『よくぞ、よくぞ』と思わないわけにはいかないような一生だったろうと思いましたが、私のように「大変だった」なんておくびにも出さないのです。
 『こだわらない、忘れる』というもコツのようです。お客商売でしたから、『対人恐怖症だ』なんて言っていられなかったと思います。そのコツはこだわらない、忘れてしまうということなんでしょうね。
  そう言えば、この間、バレリーナの森下洋子さんのロングインタビューを聞きました。彼女もバレーは天職と思って大事にしていると言っていました。とにかく踊りたくって練習したくってたまらないのだそうです。そうすると、他のことは些細なことに思えるようです。
  もう一つは、夫が当てにできなかったから、自立したんでしょうね。信仰心もなく、誰にも頼らないように自分を律して来たのでしょう。再婚はそれなりに幸せだったようですが、余り、多くを語りません。語らない人のようです。
  子供たちとも、同じマンションの別の部屋に暮らしていると言っていました。家族が全員B型で、『ゴーイング、マイウエイ』の性格のようです。私もそうですから、親子、夫婦であっても余り干渉しないというのは何となく分かるような気がします。そうするとストレスも余り溜まらないのだそうです。でも、そうしたくってもなかなかそうも行かないのです。やはり達人の至った境地なのでしょう。