2015年3月5日木曜日


英国ミステリー噂話ーモースの死

 いつもの英国ミステリーの話です。フロスト警部は退官間近で、いつ終わったとも知れずに終わってしまいました。バーナビー警部は退官して、従兄弟のバーナビー警部に変わりました。主任警部モースは心臓病で亡くなって、今は相棒だったルイス警部が活躍しています。
 この違いは、フロスト警部の原題が『タッチ オブ フロスト』と言うので、『霜の手触り』とでも訳しましょうか。かつ、特異な性格なので、親戚も親しくなさそうでしたし、相棒は毎回のように変わっていましたから、跡継ぎはできなかったのかもしれません。
 それに比べて、バーナビー警部は、日本題は『バーナビー警部』ですが、原題は『ミッドサマー マーダーズ』というので、誰が警部でもいい訳です。
 同じく、『主任警部モース』も原題は『オックスフォード ミステリー』というので、その中のモースであり、ルイスですので、継続できる訳です。
 皆さんまだ引退しなくてもと思ってしまいますが、フロスト警部役のデビット・ジェイソンさんは七十代らしいですし、初代バーナビーのジョン・ネトルズも六十代、モース役のジョン・ソーは六十歳で既に亡くなっています。ルイス警部になってからも既に十シーズンくらいになっているでしょう。
 だからと言う訳ではないんですが、モース警部は物語の中でも死んでしまったのです。この死に方が、バランスがとれていて、ファンをいかにもと納得させるのです。独身でしたから、不節制で、いつもビールを飲んでいましたし、夜も遅くまで音楽を聴いたり、推理をしたり、クロスワードをしたり、毎回女の人を追っかけて、ストレスもたまったでしょう。だから退職間近で心臓病だったと言われたら納得します。
 幸い、愛する女性には巡り会ったのです。でも彼女は、母親の看病でオーストラリアに行ってしまいました。近くにあるのは手紙だけ。
 退職という寂しさを紛らわせるように、ルイスの事件にちょっかいを出し、怒られながらも一緒に解決する、そして死んでしまうのです。
 途中、弁護士に遺産の相談をする場面がありましたが、遺産は三等分、若き音楽家への奨学金、オーストラリアにいる女性に、そして長年の相棒、ルイスに。これが妙にほっとするのです。最後はルイスが付き添うのですから。
 こういう、見る人をほっとさせるようなバランス感覚が作者には必要なのでしょうね。今もモース人気はすごくって、メイキングの放送の中では、今は亡きジョン・ソーが「モースは悲哀を込めて演じた」と言っていたり、ルイス役のケビン・ウイットリーが「もう、これ以上の作品には出会えないでしょう」と言っていたり、『オックスフォード ミステリーツアー』なるものもあるらしいのです。