2015年4月3日金曜日


本当のイギリス

 『生活の世界歴史』、やっと十巻目にたどり着きました。『イギリス産業革命』です。シェイクスピアとエリザベス一世時代の事以外はイギリス史にほとんど基礎知識の無い私でも、十八、十九世紀の話なので、なんとか着いて行けます。どちらかというと、繁栄したビクトリア女王の時代の頃のようです。
 『英国ミステリー』で言うと、シャーロックホームズの時代でしょうか。植民地をたくさん抱えて、インドとかアフリカとかがストーリーの端々に出てくる頃だと思います。『ウイッチャーの事件簿』というのにはクリミア戦争の話題が出てきましたから、この頃の話だとわかります。
 アガサ・クリスティは二十世紀に入ってからです。G・K・チェスタトンが『ブラウン神父』を書いたのもほとんど20世紀に入ってからのようです。でも、少しはその頃の生活がわかるでしょうか。
 で、どんな事が書かれてあったかというと、朝早くから夕方遅くまで働き続ける労働者、労働環境の未整備、工業都市の生活環境の不備、江戸時代の長屋にも似た住居環境ですが、イギリスは日本よりずっと寒いようで、入浴などもままならなかったようです。あの時代のロンドンのテムズ川の汚濁は有名ですが、そこから飲み水を採っていたようです。中国並みのスモッグも有名です。
 私の住んでいる霞ヶ浦湖畔でも、今は処理されているとはいえ汚水は霞ヶ浦に流されますし、飲み水もそこから採取されます。何となく、どの国も通って来た道をイギリスも通って来たんだなあと思ってしまいました。
 大地主の貴族、新興貴族のジェントリー、お金を儲けた商工業者、牧師、ホームズに出て来る貧富の格差の激しい社会が垣間見えます。そうして、時々革命を起こしながら近代化、平等化して行くようです。
 イギリスの場合、時代的に、早かったため、植民地からの収益があって、労働者の生活も少しずつ良くなったと書いてありましたが、ますます膨らんで行く資本家に対し、都市に流入する貧しい労働者という、発達しすぎる資本主義を見ながら、マルクス、エンゲルスの『共産党宣言』はここで生まれるのです。
 無知な私はマルクスはロシア人だとばかり思っていましたが、ドイツ生まれでイギリスで貧困のうちに死んだようです。この二人のウキペヂアを読むと、またそこにこの時代が見えてきますが。晩年はエンゲルスが生活の援助もしたと書いてありました。
 いつの時代も、生活のために戦い、疲れて、やがて消えて行く人々はたくさんいるのです。私だけじゃないんです。いつの日か、人を虐げなくても誰もが幸せに生きて行ける時が来るのでしょうか。