2015年7月17日金曜日


私のハムレット

 この度、メイプルショップに飾ってあった「Humlet 篠崎英米文学研究叢書5 大山俊一注釈 昭和44年5版」が売れました。
 出版されてすぐの学生時代に買ったのだと思いますが、見たところ、焼けはひどくても全く使用感がないのです。それで、買った時のいきさつを少し思い出しました。
 あのとき、授業で提示されたシェイクスピア本を買いに行ったのです。それを買ったあとで、近くにあったこのハムレットを買ってしまったのです。シェイクスピアを授業でするのだから、有名で大好きなハムレットくらい自分で読めると思ったのです。
 無知な事に、大学の英文科に入って初めて、子供のときに私が読んだのは、チャールズ・ラムの「シェークスピア物語」であると知りました。
 実際のハムレットは、1600年代の作品で、英語も、現代語とは違う辞書が必要な、いわゆる古典なのだと知りました。
 子供の時に見当違いに憧れて、英語を志し、英文科に入ったものの、目標を見失って落ちこぼれてしまった私は、このハムレットを結局読まなかったようです。
 そんなふうなので、最初、注文を見た時は学生さんが授業で使うんだろうなと思い、ちょっと上から目線の説明を書いてしまいました。連絡がつかなくって何回かやり取りをしたあとに、「昔、この本を持っていたのですが、紛失してしてしまって探していたのです。大山先生の注釈にはオックスフォードディクショナリーの引用が豊富で、図書館で何度も借りて使っていました。」と書かれていて、専門家なのだと知りました。
 こんな私に買われてしまった本が、こんなに探していた人のところに行けるなんて、まさに古本屋冥利です。どうぞよろしくお願いいたします。
 でも、一言付け加えさせてもらうと、小さい頃に読んだハムレットの感動が私の人生をここまで導いて来たんだなあという感慨はあります。英文科に入り、英語の塾をし、英語の仕事もし、今は英国ミステリーを楽しんでいる、まさにハムレットに導かれて来た道でした。