2021年11月20日土曜日

 本 アンドレ・ジッド『未完の告白』新庄家嘉章訳、新潮文庫昭和35年版

 これは私の本です。一応文学少女で、有名な本をたくさん読みたいと買いあさったのでしょうが、結局読まずじまいだったようです。

 今回11月の月一冊の本にしようと取り出しました。本当に50年前の自分は今の自分とは『違う人』なんです。養老孟子先生のおっしゃる通りです。

 読み始めると、女学校に通う年頃の少女の告白のかたちです。批判精神を持った純真な性格がうかがわれますが、あまりにも若すぎて、70過ぎのおばあさんは、「で、どうやって生きていくのよ」と時々聞いてしまいます。少女は、お父さんのことを、人に取り入って仕事を得ている、それしか取り柄のない俗物と軽蔑していて、「じゃあ、あなたはどうしてこの裕福な生活を享受しているのよ」と、ちょっとは苦労したおばあさんは言いたくなるのです。

 アンドレ・ジッドのことは実はあまりよく知らなくって、フランスのノーベル賞作家だと今回調べて知りました。『未完の告白』は『女の学校』『ロベール』に続く三部作の一部だそうです。

 ある日掃除をしていましたら、全く同じ装丁の『未完の告白』がもう一冊出てきました。そっちはちょっと古くって、昭和30年の版でした。そっちは読んだ形跡有で、夫もその昔読んだのでしょうか。それとも、ある本の『下』を二冊買った前歴のある私がぼけてて二冊買ったのでしょうか。そういえば、全く読んだことがないと思っていたのに、真ん中あたりで、『この情景は見たことがある』と思いました。どうやら、真ん中あたりまでは昔一度読んだようです。

 真ん中を過ぎると、少女の希望する生き方が語られるようになります。その希望が現実と衝突して、衝突するたびに少女は何かを感じ、考えます。これ、『自学』ではないかと思いました。こうすると、「自学ノート」を作らなくても自学することができるのだとわかりました。

 私が少女と同じ年ごろにはこんなこと考えもしなかった、世間の常識のようなものを心から信じ、『学校の勉強が一番大事』と考えていました。『ボケっとしていた、何も考えていなかった』と今思う年頃です。

 後半は急展開で、あっという間に終わってしまうのですが、それが『未完の告白』だったようです。