2023年1月11日水曜日

 物語の時間

 ドラマはミステリー、この頃はウクライナのニュースばかり見ている私が、ある日、ウクライナのユーチューブニュースを『最新のはどれか』と漁っていた時に、ふと見つけたのです。

 「言葉の話せないホームレスが遺言状を書いて、公証役場に持って行ったら、信じられないことが起こった」という説明。『ホームレスだったら、遺言状に書くようなことはないだろうに』とミステリードラマばかり見ている私はすぐに思いました。何を残すつもりだったのだろうという欲の皮の突っ張った疑問に引かれてついつい開いてしまったのです。

 この男性は生まれつき言葉が話せなくって、両親にも捨てられ、養護施設で育ちました。ある程度の読み書きはできるようになりましたが、卒業するとなかなか職はなく、それでも真面目に働いて、自分で食べていくことができるようになりました。しかし、ある日、恋人と思っていた相手に騙されて、唯一持っていた家をだまし取られてしまい、40代でホームレスになってしまいました。それからも、一生懸命小銭をかき集めるような生活をしていましたが、ある日、絶望感を感じて、件の遺言書を書いて公証役場へ持って行ったということです。

 この遺言書には彼の生きてきた軌跡が事細かに書かれていたようです。

 こうして奇跡が起きるのです。公証人は同年代の女性でした。彼女は心を動かされて、口のきけない彼のために仕事を探してあげ、住むところを見つけてあげ、いろいろと手助けしてあげました。やがて二人は結婚し、40代半ばにして子供を授かったようです。

 名前が欧米風でしたので、アメリカの話でしょうか。物語は雑でしたが、ミステリーやウクライナばかり見ていた私は、人が本来持っているに違いないやさしさがこころを打つ物語に何かほっとしました。

 しばらくすると、また、そんな物語が目に留まりました。今度は『感動サプライズ』というチャンネルで「亡くなった親友の子を引き取って育てていた俺。過労で倒れてしまった俺を見舞いに来た同僚女性が、その子の名前を聞いて・・・」といういかにも嘘っぽい話です。この人たち、みんな施設で育ちました。天涯孤独の身から物語は出発していくのです。

 もう一つ、「仕事で立ち寄ったガソリンスタンドで妊婦さんを助けて」という話もありました。話を端折ると、偶然にもそれは施設で生き別れになった双子の兄弟の妻で、双子の彼を見た共同経営者は夫を殺したと白状したという落ちまでついていました。

 物語はありえないような奇跡と粗っぽさで構成されていますが、それでもこういう物語は心の浄化にあってほしいと願う要素でいっぱいです。