2024年7月4日木曜日

 英語の功罪

 昔英文科だったので、それなりに英語に関係のある仕事をアルバイトとして何個かやってきました。プロになれるような強力な努力もしなかったので、やりながらもずっと劣等感を抱きっぱなしでした。

 そんな私ですが、この歳、75歳になって、ユーチューブを見るようになると、ドラマもニュースも英語番組が結構多いので、昔に比べて、英語に晒される時間が格段に多いのに気が付きます。最近になってウクライナの英語のニュースを見ていた時に、結構理解している自分がいることに気が付きました。それ以来、他に日本語のウクライナニュースがないときは半分くらいまで見てしまうので、随分と馴らされた気がしていました。

 そんな時、いつも行くスーパーで、隣に一歳くらいの赤ちゃんを抱いた女性に会いました。明らかに日本人ではない感じだったのですが、アジア人のようだったので、「どちらからですか」と日本語で聞きました。彼女は「フィリピンから」と答えました。

 ここで大きな声で言い訳をしなければなりませんが、私は時々下の娘に、「お店の前で悪口を言ってはいけません」とか、「相手がどう思うか考えてから言いなさい」とか、怒られています。悪気はそんなにないと思うのですが、頭に浮かんだことはすぐに口をついて出てきてしまいます。『歳のせい』と言い訳をしたいのですが、違います。きっと、自分の頭に浮かんだことをすぐ言うということは、自分の存在感を示したい欲求なのだと思われます。特に人里離れた田舎で育つと、こんな性格になるのではないかと思います。

 で、どんな失敗をやらかしたかというと、「そうなの、どうりで少し色が黒いと思ったわ」と言ったのです。再度言いますが、決して悪気はなかったのです。ただ、純粋にそう思ったのです。

 お母さんは悲しそうに赤ちゃんを抱きしめてキスをしていました。『失敗、心を傷つけてしまった』とさすがに反省しました。

 そこで、フィリピンの人たちは英語が公用語並みに話せるということを思い出しました。

で、英語で聞いたのです。「何年くらい日本に住んでいるんですか。」

 彼女は驚いたように、それでも嬉しそうに「15年住んでいるんです。」と答えました。

私は驚いて、「15年、15か月では無くって」と言いました。彼女は「15年です。上の息子は地元の中学校の3年生です。」と言いました。そのあと、こうも言いました。「あなたが英語をしゃべってくれて本当にうれしい。」

 私はもちろん「ほんの少しだけよ」と言いました。それから、少し「近くに住んでいるんですか」と聞いたりして、馬脚が現れないうちに「さよなら」しました。でも、相手の国の言葉で話すということは『国際親善の最初』と聞いたことはありましたが、こんなにも簡単に失敗を『ない』ことにしてくれるとは思いませんでした。

 でも、いい気になって、またぞろ『舌禍』を起こさないように反省を忘れないようにします。ただ単に相手がいい人だっただけかも知れませんから。