2024年8月16日金曜日

 おひとり様の話

 わが家もご多分に漏れず、別れたいと思ったことはお互いに何度もあったと思います。そのたびに、経済的不安や世間体、お互いへの責任感などでうやむやになって消えていきました。夫が80歳、私が71歳の時に夫が亡くなり、私はおひとり様になりましたが、実はほっとしている面もありました。前に書いたように『やり切った』感もありましたし、責任を解かれたという感じもありました。

 少し時間がたつと、『こうやってやればよかった』『食事療法をしっかりやればよかった』と思うことが折に触れて出てくるようになりました。

 こんな責任、感じなくってもいいのですよね、おひとり様ならば。自分の健康管理なんか自分の責任でしょ。自分の好きなものを自分で作って食べればいいのです。「体を洗いなさい」とか「爪を切りなさい」とか、私にとやかく言われることはなかったのです。

 考えると、夫もおひとり様になったほうが幸せだったのではないかと思うこともしばしばです。お互い、環境を変える勇気がなかっただけなのかもしれません。

 世間では老若男女、おひとり様が増えて、社会問題のように言われていますが、おひとり様はそんなに悪いことではない気がします。自分のやりたいこと、やらなければならないことを一生懸命していると、日々は瞬きしている間に過ぎてしまいます。4年なんてあっという間でした。

 夫は結婚してすぐに、韓国旅行に行き、そこで、ふざけて、または嫌がらせだったかもしれませんが、韓国の結婚衣装を着て写真を撮ってきました。亡くなった後に、夫の書類の山の中から見つけたのですが、私の和式の結婚衣装より似合っていました。

 だから、私も嫌がらせで、それを仏壇に飾っています。責任をその見知らぬ韓国のモデルさんらしき女性に投げてしまった感じがして、気が楽になります。

 今になってわかりますが、私には人の分まで責任を負えるようなキャパシティーはない、又はなかったような気がします。『一人で生きるべきだったのかも』とこの頃になって思います。昔はおひとり様は厳しい人生を強いられる感がありましたが、今は福祉が整って、それなりに、自分らしい人生を送れそうな気がします。夫にも悪いことをしてしまったと、またまた責任を感じてしまっています。