仕事はハードなもの
二月始めにも四件ほどお買い上げいただきました。一番うれしかったのは自費出版の新刊をお買い上げいただいたことです。そうなんです。それが売りたいばっかりにショップを開いたのです。手持ちの中古本の販売はおまけのようなものです。勿論売れなければ困ります。家もいっぱいですから。
その中に、ファッショングラフィティなる、およそわが家の所蔵本としては似つかわしくない本がありました。夫が知り合いの方から頂いたか、買ったか、著者のサイン入りでした。
それはとても大きくて重いペーパーカバーの本で、中は見るもまばゆい民族衣装のオンパレードのようでした。ようでしたというのは、わが家ではそういう本を好んで見る人はいないのです。夫の興味は建築、歴史、宗教。私は文学、歴史、ハウツー本。娘は歴史、映画,漫画。嫁に行った上の娘はこれに占いの本が入ります。
だから、本の中はとてもきれいだったのですが、重い本なので、何度かの引越しでぺ—パーカバーの上部に擦り傷や破れができてしまっていました。帯も日に焼けて緩んでいました。こういう装丁の本は傷み易いのだと思いますが、アマゾンに出ているのを調べても、中身はこれだけ豪華な本なのに、高い値段のついているものはありませんでした。
で、中身で勝負とばかり,著者サインにも後押しされて、値段を少し高めに設定しました。
お客さんは同じものを二冊買ったのだそうです。そして比べてみたら、私の送った本がみすぼらしいのに高いと言って、お叱りのメールを頂きました。
大分ショックでした。確かに表面はみすぼらしいのです。だから、最初に『ごめんなさい』と書いて,高い理由も書いて、『返品でもいいですよ』と書いて返信しました。初めての返品かと思いました。そこはすぐにへこたれる私ですから、しばらく意気消沈していました。
けれどもすぐに、メールが来て、『表紙を見てショックを受けてあんなメールを書きましたが、中はきれいでしたので、このまま頂いておきます。大事にします』と書かれていました。感謝のメールを送りました。だって、家ではあの本の居場所は無かったのですから。
もう一つ、意気消沈したことがありました。最初の頃、いらないものの代表として、古いレコードがあったので、音楽関係という項目をつくって安く、並べてありました。そこの注文が来てしまったのです。『どうしよう』と思いました。レコードプレーヤーだって、とっくの昔にありませんから、聞こえるのかどうか,確かめるすべもありません。一晩悩んだ末に、一応送って,向こうで確かめてもらうことにして、「もしダメだったら廃棄して下さい」と書きました。
その上にもう一つ攻められるべきことがあって、私は聞いたことの無いレコードだったので、『未使用』と書いてしまったのです。でも中を見たら、『使用感あり』で、多分、娘のものだったのでしょう。これを書きましたら、即、返信があって、その方は、未使用のものが欲しかったようです。未使用のレアなレコードから専門の業者に頼んでCDをつくるのだと言っていました。『プロなのだなあ』とちょっと背筋が寒くなりました。その時は、もう送ってしまった後で、結局向こうで廃棄してもらうことにしました。
勿論、慌てて音楽関係のカテゴリーは削除しました。これも意気消沈しましたが、『自信の持てない商品は並べない』というのは当たり前のことなのです。学習させてもらいました。
で、しばらく、沈みがちだった私に、最初に読んだ営業マンの吉江氏の『いけしゃあしゃあとやれ』という言葉が浮かんできました。夫も、「引きずらないことだよ」と励ましてくれましたが、元々、すぐに忘れてしまって引きずらない名人の夫はこういうときはいい手本になります。